
迎えに
「彼は生きてないかもしれないよ?」
ジンはそう私に向かってそう言った。
「生きてるかもしれないわ。……もう、この目で見るまでは絶対にあきらめない」
「君らしいや。その気持ちの百分の一でも僕に向けてくれたら僕にも勝機が見えそうなのに」
「ないわね、それだけは。別の気持ちなら向けてあげられるけど」
そういって私たちはクスクスと笑う。
わかっている。
お互いにわかっているから、笑いあえる。
「それじゃあ、そろそろ行くわね」
「僕も行くよ。……五年後」
私は一度反対に向けた体を少しだけ戻す。
「五年たったら、君のところに遊びに行こう。それじゃ、頑張って。僕は恋敵を助ける気にはなれないからね」
その言葉に、私は一度目を見開いてほくそ笑んだ。
「うん……。五年後ね。待ってるわ。――ありがとう」
「さよなら。僕のお姫様」
そうして、私たちは別れた。
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