目指す場所

「サファイアの今の目標って何?」
 突然そう聞いてきたのは、隣りに住んでいるルビーだった。

 ルビーはせっせと何かを縫いながら、視線も上げずに言葉だけを隣りにいる少女、サファイアに向けて放っている。
「“今の”目標?いきなりどぎゃんしたと? ルビー」
 逆に問われたルビーは、ん〜?と唸ってから、手を止めずにあっさりと返した。
「何となく気になったから。ほら、ボクの目標は今でもコンテストをより極めることだろ? 君の目標、バッヂを全て手にいれるのは達成したから、君は今何を目指してるのかな、って思っただけさ」
 ルビーはだから、と言って付け足してから、再び最初の質問を口にした。
 サファイアはその二度目の質問に、う〜んと唸り始める。
 そういえば、父ちゃんのフィールドワークをまた手伝い始めて、よく考えていなかった。
「そうったいねぇ……。あたしももう十一歳になったとやよね。う〜ん……」
 最初は十歳でリーグ優勝して、カントーのトレーナーを越えるはずだったのだ。
 けれど、今リーグ優勝をしても“並ぶこと”はできても“越えること”はできない。
「そうったい!」
 サファイアは何かが閃いたように、パッと明るい顔で声を上げた。
 そうしてからルビーにクルッと向き直る。
 ルビーはそこで初めて手を止めて、そばに置いてあった色紙と黒ペンを針と布の代わりに持った。
「今のあたしが十一歳でリーグ優勝したカントーのトレーナーさんに勝てば、そん人を越えたことにはならんやろか? なるとよね! 決めたったい。あたしはカントーに行って、そん人にバトルば申し込むったい!」
 サファイアはそう意気込むがしかし、聞いてきた張本人、ルビーからの返事はない。
 不思議に思い、何をしてるのかと彼を覗き込むと、紙に何かを書いていた。
「ルビー、何しとると?」
 サファイアがそう聞く間にも、ルビーは紙に何かを書き留めて、眉をしかめた。
 そして言いにくそうにサファイアに向き直る。
「サファイア……。いい加減コレから離れないかい?」
「コレ?」
 ルビーはこくんと頷く。
「この目標、影響を受けたのであって、君自信の本当の目標じゃないだろう?」
「それじゃいかんと? ルビー。あたしの思い出の憧れの人の目標とよ? それをあたし自身が目指しちゃいかんと?!」
「そうじゃなくて! いつまでも引きずって欲しくないっていうか、何か、気恥ずかしいじゃないか…」
 非常に言いにくげにルビーは最後まで言葉を口にする。
 その彼の言葉に、サファイアは逆にキョトンとした。
「何でルビーが気恥ずかしくなると? あたしの憧れの人は、やんちゃでバトル好きったい。今のあんたとは別人とやよ? だから、あたしが憧れの人を追いかけても別にルビーには関係なかとでしょ?」
「別人…?」
 ルビーは訝しげにまた眉をひそめる。
「そうったい。あん人は今のあたしのキッカケを作ってくれた人ったい。今目の前にいるのは、キレイ好きなルビーって人とよ? 性格が全然違うったい。だから別人ったいよ。やから、あたしはあん人の目標を追い求めるったい。“今の”あん人の隣りに立てるように……」
 最後の方は尻つぼみになっていったが、彼の耳にはしっかりと届いた。
 サファイアはそれに、とつけたす。
「ルビーも人のこと言えんったい。あんたのその目標はあたしの影響やろ? あたしの目標どうこう言える立場じゃないったい!」
 ルビーはしばらくぽかん、とサファイアを見ていたが、突然くつくつと笑い始めた。
 ダメだ。この娘(こ)には敵わない。
「ど、どうして笑うったい!」
 そのルビーの“敵わない”と太鼓判を押された少女は、顔を赤くしてわたわたとしている。
「ごめん、何でもない……。それじゃ、君のお願いごとはこれでよしっと」
 ピタッ。
 ルビーのその一言で、わたわたとしていたサファイアの動きが止まった。
「あたしのお願いごと……?」
 それからバッとルビーの手の内にある紙を見た。
 文字が書いてある。
「う゛……」
 サファイアは読めずに固まった。漢字で書くとは……おのれ!
「ルビー。一体それに何を書いたと?」
「だから、君のお願いごと。ほら、もうすぐ七夕だろう? その準備だよ。明日笹を取りに行くんだ」
「七夕……?」
「……もしかして知らないのかい?」
 サファイアはこくりと素直に頷いた。
 ルビーは仕方ないなぁ、と呟くと、彼女のために七夕講座を開く。
 サファイアは真剣な面持ちでそれを注意深く聞いていく。
 七夕はそう、もうすぐそこ。

 目指すのは憧れた人。

 目指すものは自分の始まったところ。

 そして目指す場所は、あの人の隣――。


〜*〜*あとがき(もどき)*〜*〜

携帯投稿って便利なんだか、不便なんだか。

気がつけばもうすぐ七夕ですね〜。てことで、そうじゃないけど七夕関連話。

サファイアが最終的に目指すものは何だろう、と考えてたら浮かんだ話。
やっぱ、レッドに勝つことでしょう。

私なりのサファイアのルビーに対する気持ちは文中通り。
サファイアが目指すのは今のルビーの隣りに並んで立つことだと思うんですよね。
で思いでの男の子は一生の憧れの人だと思ってますよ。
だから、今のルビーは憧れる存在ではなく、愛すべき、または隣りに立ちたい存在、なわけですよ。

う〜ん。にしても携帯投稿、なぜか思い通りに書けない。てか打ちにくい。
やはり手書きかパソコに限るがな。

何かルサ話がもう一話あるので、そのうち書く(描く?)かも…。

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