とあるところのバレンタインは。@ルサ

「ルビー。これあげるったい」
 サファイアがそう言ってチョコを渡してきたのは夜だった。

 ルビーが自分の部屋で裁縫をしていると、突然こつこつと窓が鳴り、彼女がやってきた。
 やれやれと思いつつも、いつも通り窓を開けていつもの一言を言う。
「普通に下から入ってきなよ。誰も君を嫌ってないよ?」
「そういう問題と違か。こっちの方が近いったい」
 そう言って彼女は自分の来た道をびしっと指す。
 それは木の上。彼女はいつもいつも木のツルを伝ってここまでやってくる。自然の中で育った彼女だからこそできる技なのだが、いつもいつも二階から訪問されるのもどうかと思う。
「それで、こんな時間になんのようだい?オダマキ博士が心配するだろ」
「それは大丈夫ったい。このくらいの時間ならまだ心配はせんとね」
「このくらいって……。まぁ、いいや。とにかく入りなよ。外は冷えるだろ」
「お邪魔するったい」
 ルビーがサファイアを中に入れ、窓を閉める。それからルビーは一度下へと降りていった。
 いつものことなのでサファイアは何も言わずに彼の部屋にちょこんと座って彼の帰りを待っている。
 数分してルビーがマグカップを片手に部屋に戻ってきた。彼女の分のお茶をとりに行っていたのだ。
「それで?」
 ルビーはマグカップを手渡しながら用件を尋ねる。
 こんな時間に来たからにはそれなりの用件があるからとしか思えない。昼間に会うのは別として。
 サファイアは受け取りながらえへへ、と意味ありげに笑った。
 ルビーがよくわからず首をかしげながら向かいに座る。
「ルビー。これあげるったい」
 その直後に突然目の前に包装された箱が差し出される。
「え?」
 思わず受け取ってその箱を凝視してから、ルビーはサファイアの顔を見た。
 彼女の顔は見たいものを見れた、とでもいったような満足そうな笑顔で占められている。
「今日はバレンタインなんやろ?だからこれ、あげるったい」
 サファイアの何気ない言葉に、ルビーは目を見開く。
「アンビリバボー……。君、バレンタイン知ってたのかい!?」
「失礼とねぇっ! ……って言うても、ブルーさんに教えてもらったんやけんね」
 その言葉にルビーはあぁ、と納得する。そうでもなければサファイアがそういう行事を知っているとは微塵も思っていない。ある意味ではひどいように思えるが、ほとんど野性の中で育ち、世間を見てこなかった彼女ならありえることだと思う。
「バレンタインって、身近な男の子にチョコをあげる日なんやろ?あたしにとって身近な男の子はルビーやから、これあげるったい。ブルーさんが手作りをあげると喜ぶって言うてたから、チョコ、手作りったい」
 なんか違う。
 サファイアの説明に、ルビーは率直にそう思った。
「……サファイア。ほかにブルー先輩から何か聞いてる? バレンタインについて」
「え? そやね……。あ、そうったい。バレンタインのお返しは倍返しなんやろ?」
 それを聞いた瞬間、なんでかルビーは、やられた、と思ったとか。
 ルビーはやれやれ、と言った体でため息をつき、がさごそと包みを開いていく。蓋を開けると中には小さなチョコがいくつか入っている。その中の一つを手にとって、ルビーはそれを口に入れた。
 チョコの味の中に別の味が広ろがり、それがチョコの味とよく馴染みあっている。――正直に言うとおいしい。
「これ、木の実入ってる?」
「そうったい。モモンの実が入ってるったい。他にもヒメリの実とかオレンにキーなんかもいろいろ使ってみたけん。一つ一つ違う味になってるはずったいよ」
 そう答えるサファイアの目は、何かを期待している目をしている。
 その目が聞いているものがなんなのか、ルビーはとっくに気づいてる。だから言った。
「うん。おいしい。野生児の君にしてはなかなか上手じゃないか。もっと野蛮なチョコが来るかと思ってたよ」
 かちんっ
 そんな音が聞こえた気がした。と、同時に彼女の顔が別の意味で赤くなっていく。
「ルビー……! 人がせっかく好意でチョコば作ってやったとに、なんね!? その言葉は!!」
 怒りで顔を赤く染め上げたサファイアに、ルビーはあくまでしれっと返す。
「何って、そのまんまだろ。原始人のほうがよかったかい?」
「よくなか! 野生児野生児ってうるさいったい!! もうあんたなんかにチョコなんかやるのはやめるったい! そのチョコ返すとね!」
「やだよ。ボクが君からもらったんだから」
「あんたなんかにやるにはもったいなか! 父ちゃんとセンリさんにでもあげてくるけん、返すったい!」
「父さんにあげるくらいならボクがもらうよ。父さんには母さんからのチョコがあるしね」
 なかなか返そうとしないルビーに、サファイアがぶちっ、と切れる。そして夜にもかかわらず怒りに任せて声を張り上げた。

「せからしかっ!! 早く返すったーいっ!!」

 一階にいたルビーの母は、突然響いた怒声に天井を見上げた。
 そして呟いた。
「ケンカするほど仲がいいってよくいうけど。ルビーとサファイアちゃんの場合は本当に仲がいいわよね」
 怒声の後、どたばたと二階で暴れる音がするが、彼女は特に気にせずに、今見ていたテレビ番組に視線を戻す。
「あなた。ジム戦終えて早く帰ってきてよね」


*〜*〜あとがき(と称したいもの)〜*〜*

バレンタイン過ぎてからふと沸いたネタです。

いや、基本的にサファイアは行事的なものは知らないと考えてますから。
だって、ポケセン知らなかったし。テレビなんかもあんま見てそうにないし。

ルビーは決して素直に褒めたりはしないだろうな、なんて思いまして。普段はああだから(笑)

二人のケンカは書いてて楽しいです♪


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バレンタイン当日に何もしなかったから、一応。

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