RSE物語 story1―はじまり―

ミシロタウンに引っ越してきたナオは、
野生ポケモンに襲われているオダマキ博士と遭遇する。

RSE物語―はじまり―

 ブロロロ……――キキッ!
 一台のトラックが、ある家の前で停止した。
 トラックには『引っ越しセンター』と書かれている。
 ガチャン、という音とともに、後ろの荷台の扉が開けられた。
「さあナオ、着いたわよ。新しい我が家♪」
 扉を開けた女性は、そのまま家の方へと歩いていく。その後ろを引っ越し屋さんのゴーリキーがダンボール箱を抱えてついていった。
 扉から足が出てきた。
 一度腰掛け、飛び降りる。ピンク色のポケモン、ププリンも一緒だ。
 荷台から出てきた女の子は、周りを仰ぎ見て、呟いた。
「ここが、ホウエン――」

 自分の荷物が入ったダンボールを一つ抱え、ナオは自分にあてがわれた部屋へ入っていった。
 頭の上にはププリンが乗っている。
 先に運びこまれていた机やベッドの他に、真新しい時計が一つ壁に掛かっている。
「パパからのプレゼントってこれか。……シンプル・イズ・ザ・ベスト?仮にも女の子の部屋だってのに無柄はないでしょ」
 そして気がつく。
「……これ、時間あってないし。ま、いいや」
 時計から離れて、抱えていた荷物を降ろし、蓋を開ける。
 頭からププリンが飛び降りて、廊下の方へと歩いていく。
 その後ろ姿に振り向かずにナオは声をかけた。
「プー。ママ達の邪魔しないようにね」
 ププリンが廊下に消えた。と同時に、一階から声がかかった。
 仕方なく片付けを中断して一階に降りたナオは、母親の所へと歩いていく。
「ママ、呼んだ?」
「呼んだ呼んだ」
 にこにこと頷いたナオの母は、ナオを見て顔の前で手を合わせた。
「ごめんナオ。あなた先に一人でパパの友達のオダマキ博士にあいさつに行ってくれない?」
「わたし一人で? ママは?」
「わたしは後でパパと行くから♪ 子どもは暗くなる前に行っちゃいなさい」
「あーそう」
 母親の返事に、ナオの目が呆れたように半眼になっている。
「じゃあ行ってくるね」
「プーは連れてかないの?」
「新しい家が珍しいみたいだから置いてくよ。プーのことよろしく、ママ」
 母親はコクリと頷く。
「わかったわ。そっちこそよろしくぅ♪」
 母親の返事を聞いたナオは、自分の家を出た。

 ピンポーン
 インターホンを鳴らして待つこと少し。
 ドタドタと音が聞こえ、ドアが勢いよく開かれ、
「はーい! どちらさまでしょーか」
 小さい男の子が元気いっぱい飛び出してきた。
 しかし、ナオが何か言う前に、
「あっ! もしかしてお隣りさん!?」
 と嬉しそうに声を上げた。
「ユウヤ。お客さん?」
 家の奥の方から女性の声が聞こえてきた。
「うん、お隣りさんだよ! ママ!!」
 パタパタと音がして奥からエプロンをした女性がでてくる。
「あらこんにちは」
「こんにちは。今日隣りに引っ越してきた者です」
 ナオはそう言ってペコリと頭を下げた。
「初めまして。あなたがセンリさんの娘さんね?」
「はい。ナオっていいます」
「ボクはユウヤだよ!」
 男の子がかわいらしく自分を指して名前を告げた。どうやらよっぽど“お隣りさん”が嬉しいらしい。
「あの、オダマキ博士にもあいさつをしたいんですけど」
「あら、あの人……今どこかしら?」
 本気で首を傾げている奥さんに、ナオは不思議そうに問い掛けた。
「あの、どちらにかお出かけにでも?」
「あ、そういうわけでもないんだけど。あの人研究所にいないことが多くてね。フィールドワークっていうんだけど、外に出てることが多いのよ。ユウキが一緒だからいいんだけど」
「ユウキってボクのお兄ちゃんだよ!」
 本気で困っている奥さんに、ナオはじゃあ、と声を上げた。
「一回研究所の方に行ってみます。場所、教えてもらえますか?」

「ここか」
 教えてもらった通りに道をきたナオは、一つの大きな建物の前に行き着いた。
 インターホンを押して少し待つ。
「はい?」
 助手と思われる人がでてきた。
「オダマキ博士、いらっしゃいますか?」
「悪いけど、今外に出ちゃってるんだ。いつごろ帰ってくるか……」
「そうですか」
 しかし助手の人は悪く思ったのか、何かを思い出すようにこう続けた。
「今日は101番道路の方に行くと言っていたよ。もしかしたらそこに行けば会えるかもしれないけど」
「その道路って」
 場所を教えてもらうとお礼を言い、ナオはそのまま101番道路に向かって歩き出した。

 ミシロタウンからコトキタウンまで続く一本道。
 そこが101番道路だが、道の両脇は人を寄せ付けない自然の領域となっている。
「……しまった」
 そこに来て、ナオはようやく致命的なことに気が付いていた。
「わたし、博士の顔知らない……」
 考えればすぐにわかることだったのだが、誰も研究所にいないなど思わない。
 ――結論。まぁ、なんとかなるんじゃない?
 そう考えて再び歩き出そうとした時だった。
 ガササッ!
 横手の草むらから何かが飛び出して来た。
「!?」
「た、助けてくれーっ!」
 飛び出してきたのは一人の人間と一匹のポケモン。
 がっしりとした図体の男の人だ。
「き、君! 頼む、助けてくれ!」
 ナオの存在に気付いたその男の人は、逃げ回りながら助けを求めてきた。
 が。
「なんで?」
 ナオの返事はあっさりとしたものだった。
「なっ――!」
 男の人は絶句している。
 ナオは続けた。
「ポケモンに襲われてるってことは、おじさんがそのポケモンが怒るようなことしたからでしょう? だったら襲われるのは当然の報いじゃない。それにわたし、関係ないし」
「ちょ、ちょっと君!」
「あと、わたし今ポケモン持ってないんで。じゃ、急いでるんで頑張ってください」
 ヒラヒラと手を振ってその場を去ろうとした時、別のところからまた違う声がした。
「父さん!?」
 見れば、一人の少年が草むらから姿を現している所だった。
「と、父さん! ゴロウ!」
 少年が慌ててボールを投げ、中からミズゴロウが飛び出してきた。
「ゴロウ、“みずでっぽう”!!」

 バシャッ!    ミズゴロウの口から勢いよく発射された水が、男の人を襲っているポケモンに見事命中する。
 ポケモンは慌てて逃げていった。
「今のはポチエナか……。父さん大丈夫?」
 少年が男の人に近付いていく。男の人は疲れたようで、地面に座り込んでいた。
「ああ。助かった、ユウキ」
「父さん、ユウキ……?」
 ナオが呟くと、ユウキ、と呼ばれた少年がこっちを向いた。
「ユウキはボクの名前だ。こっちはボクの父さんだよ」
 声にはトゲトゲしさが含まれている。
 しかしナオは全く気にせずに問い返した。
「……もしかして、オダマキ博士?」
「ああ、私がオダマキだが」
 返事はイエスだった。
 ナオはやれやれ、といった風だ。
「それならそうと言ってくれればいいものを」
 そこで一旦言葉を切り、挨拶の風体を整える。 「初めまして、オダマキ博士。今日ジョウトからお隣りに引っ越してきたナオといいます」
「隣り? ということはセンリの娘のナオちゃんか!」
 ナオは、はい、と頷いた。
「隣、て君がお隣りさん?」
 ユウキが疑問系で声を上げた。
「そう言ったじゃない。一度言ったことを聞き返されるのは嫌いだわ」
 ムッ!
 ユウキの顔が見る間に不機嫌になる。
「父さんから聞いたけど、君、ジムリーダーの子だって聞いた」
「そうよ」
「ジムリーダーの子ならポケモンも使ったことがあるんじゃないの?」
「あるけど、それが?」
 ナオの返事は淡々としている。それが更にユウキを扇いだ。
「じゃあなんで父さんが襲われたのを助けようともせず見てたんだ! ポケモンを使ったことがあるなら、ポケモンの扱い方や接し方もわかってるだろう!?」
「わかってたらなんでもかんでも助けろって言うの? なんでよ。だいたい結果的にあんたが助けたんだからいいじゃない」
「そういう問題じゃない!」
 二人の周囲は完全に険悪モードになっている。
 ナオが一つ溜め息をついた。
「助けなかった理由はさっき博士本人に言ったわ。一度言ったことを何度も言いたくないから、知りたかったら博士に直接聞いて」
 それから、とナオは続ける。
「さっきのポケモンがポチエナでよかったわね」
「どういう意味だよ?」
「ポチエナってしつこく追って来るけど、反撃すればすぐ逃げていくポケモンじゃない。そんなポケモンでもないと、あなたのポケモンじゃすぐに決着なんてつかなかったでしょうね」
「……つまり、ボクのポケモンが弱いってこと?」
「ポケモンだけじゃなくて、あんたの腕も」
「困ってる人を助けようともしない人に言われたくないよ」
「あ、そう。ずっとこの町にいるんならいいんじゃない? それで。じゃあ、わたし帰るから」
 ナオはすっ、と背中を向けて歩きだして、数歩進んだ所で呼び止められた。
「待って!」
 背中越しに振り返る。
「そこまで言うんだから、君は、ポケモン強いんだろうね?」
 ナオはその言葉の意味を理解して、にっ、と口端を軽くつり上げた。
「試してみる?」
 それはユウキからの挑戦状だった。


----あとがき----

え?またこういうところで終わるって? いいじゃないですか。切りがいいですし^^

なんかこれだけで二人がどんな性格してるかよくわかりますね。 特にナオ。彼女は辛口コメンテーターなのでズバズバ言うし、自分の嫌いだと思う相手にはとことん冷たいです。 オダマキ博士とユウキとの対応の違いがそれを物語ってますね^^;

とにもかくにも、二人の出会いはこんな感じです。

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