RSE物語 story11―105番水道―

成り行きでユウキと一緒にハギ老人の船に乗せてもらうことになったナオ。
一方、ハギ老人に釣りを勧められたユウキは一人釣りをしてみることに。

RSE物語―105番水道―

 波の音が聞こえる。耳を済まさなくともその辺りから。
 今日は穏やかな海で、船の揺れは静かなものだった。
 その船の中で、壁に寄りかかるように座って目を閉じているのがナオ、立ち上がってハギ老人とともに海を眺めているのがユウキである。
 最初は外に出てちょこちょこ動き回っていたププリンのプーだが、あまりのはしゃぎぶりに、海に落ちたら危ない、とのことでボールに戻された。
 ここでププリンの特徴を述べると、軽い。とにかく軽い。跳ねだすと止まらなくなるというくらいに。
 時間としては、お昼はとうに過ぎている。そんな感じだ。
 ユウキがナオを振り返る。
「ナオも一緒に見ない?」
「いい」
 この会話も何回か繰り返されている。
 ハギ老人がぼそりと呟く。
「つっけんどんな子じゃのう」
「話す時は話すんですけどねえ」
 ユウキは慣れたのか、苦笑するだけだった。
 聞こえるものが再び波の音だけになった時、それを割くように突然電子音が鳴りだした。
 ナオがゴソゴソとカバンを探り、目的のものを取り出してピッ、と通話ボタンを押す。
「もしもし?」
 ナオの口から出た言葉は、不機嫌さを伴っていた。
『ああ、ナオか?』
「なにパパ」
 どうやら相手はセンリのようだ。
『今どこにいるんだ?』
「海の上」
『……は?』
 電話向こうから困惑気味の返事が返ってくる。
「ハギって人に船に乗せてもらって、ムロに向かってる途中」
『ああ、ハギ老人か』
 その返事に、ナオは意外そうな顔をする。
「ハギ老人のこと知ってるの?」
『トウカシティ郊外に近い、102番道路に住んでるハギ老人だろう? トウカじゃ有名だよ。昔は凄腕の船乗りだったって』
「ふーん。――それで?」
 話が逸れていることに気づき、ナオが用件を促した。
『ああ、ミツルくんのことを一応報告しておこうと思ってね。今日、無事にシダケタウンに引っ越していったよ。お前に“ありがとう”と言っていたよ』
「…………そう」
『ムロに向かってるってことはカナズミジムは勝ったんだな。次も頑張れよ』
「言われなくてもそうする」
 ピッ、とボタンを一つ押し、通話を切った。
 ふと顔を上げると、いつの間にかユウキがすぐ横にいる。ナオの手もとをじっと見つめて。
 ナオは怪訝そうに聞いた。
「何?」
 ユウキはポケギアを指差して答えた。
「それなに?」
「ポケギア」
「ポケギア?」
「……知らない?」
「うん」
 ――沈黙が降りた。
 ナオがそっぽを向いて小さく息を吐く。
 そしてぼそり。
「田舎者……」
「わるかったな、田舎者で」
 少しムッとした反応が返ってきたのを見て、ナオはめんどくさそうに簡単に説明した。
「携帯型多機能コンピュータ、ポケットギア。略してポケギア」
「多機能? 電話以外にも機能があるってこと?」
「それ以外にどんな意味にとれるの?」
 そう言いながらも、ナオはポケギアの画面をユウキに見せながら横のボタンをポチポチと押していった。
 電話、タウンマップ、メール、その他。
「へぇ……。そんなすごい機械が世の中にあったんだ」
 ユウキの反応にナオは無関心な顔でポケギアをしまいこんだ。
「ユウキくん、ナオちゃん、暇じゃないかい? 釣り道具ならあるが」
 話が一段落したと見たのか、ハギ老人が船を運転しながら声をかけてきた。
 ユウキがハギ老人に一度視線を向けてから、またナオの方に戻す。
 ナオは短く返した。
「いい」
 なんとなく予想できた答えなので、ユウキはわかった、と一言言うだけで他には何も言わずに立ち上がった。
 ユウキ一人、やるつもりのようだ。ハギ老人と二言三言言葉を交わすと、ハギ老人が指差した場所から釣りざおを取り出した。
 ナオのいる船尾横から海に向かって投げる。少しして引き上げ、また投げる。
 それを何度か繰り返した時だった。
 くんっ!
「あ」
 さおから伝わった手応えに、ユウキは小さく驚きの声を上げた。
 ぐぐっ!
 さおがしなり始める。
 ユウキは重心を傾け、踏ん張りをきかす。腕に力を込めて引き上げようとした。
「くぅっ」
 ばしゃばしゃと水面が暴れ始めた。
「あと、少し!」
 ばしゃんっ!!
 ポケモンが引き上げられた!
「やった! ――て、ぅえ!?」
 ごいんっ。
 喜んだのも束の間、引き上げたポケモンがユウキの顔に突っ込んできて、激突した。
 妙な呻き声を上げてユウキは背中から倒れ、ポケモンは船の上に転がった。
 一部始終を見ていたナオが一言ぽつり。
「バカみたい」
 完全に呆れ顔である。
「あたた……」
 ユウキが額を押さえながら上半身を起こす、と同時にミズゴロウのゴロウが勝手に飛び出していく。
「へ?」
 バシッ!
 なんでか戦闘を開始している。
「え、ええと」
 少なくとも相手には敵意があるようなので、応じることにした。
「ゴロウ“たいあたり”」
 どんっ!
 プシュワッ!
 たいあたりを受け止めたそのポケモンは、頭の上から水を吹き出した。
 その時になって、ユウキはようやくその野生ポケモンをじっくり見た。
 青色の丸っこい体だ。図鑑を取り出す。
「ホエルコ……か。ゴロウ、大丈夫か?」
 足元に戻ってきたゴロウに、ユウキは状態を確かめる。
 ゴロウはヤル気満々だ。
「よし。ゴロウ“どろかけ”!」
 ブシャッ!
 口から泥を吐き出す。
「続いて“みすでっぽう”!」
 プシュウ!
 今度は水を勢いよく発射した。
 ホエルコは水圧に耐えながら反撃の機会をうかがっている。
 元々水タイプであるホエルコにはこうかはいまひとつだ。
「ゴロウじゃ分が悪いか。ゴロウ一度もど――っ!?」
 指示を出そうとしたユウキは、ゴロウに目をやり思わず続く言葉を飲み込んだ。
 ゴロウの体が小刻みに震えている。
「ゴロウ!?」
 突然の変異にユウキは慌てふためいている。ナオは目を半眼にしてぶっきらぼうに言い放った。
「進化よ、ほっときなさい」
「し、進化?!」
 ユウキは改めてマジマジとゴロウを見た。一瞬ゴロウの体が光輝き、別の姿へと変化した。
 ユウキは、姿を変えたゴロウに図鑑を向けた。
 図鑑にはヌマクローと表示される。
「これが、進化か。……よし!」
 ユウキはホエルコの方に視線を向ける。ヌマクローに進化したゴロウも同じく戦闘体勢に入った。
 ユウキは図鑑でヌマクローの使える技を確かめる。
「ゴロウ、“マッドショット”!!」
 ゴバッ――!
 口から発射された泥の塊が、ホエルコに向かう!
 ホエルコも対向して水を発射した。
 二つがぶつかり合い、均衡したのは一瞬。水を突き破って、マッドショットがホエルコの体にヒットした!
 そのままホエルコは、船の壁にぶつかる。
「いけえ!!」
 すかさずユウキは空のボールを投げる。ボールはホエルコを中に収めると、しばらくして静かになった。
「やった! ホエルコゲットだ、ゴロウ!!」
 ユウキもゴロウも嬉しそうに、ハイタッチをした。
 一部始終を見ていたナオは相も変わらずため息一つに呟いた。
「バカみたい」


~*~*~あとがき~*~*~

結局5回になってしまった。4回に収めるはずだったのにorz

いつの間にか「ユウキくん、ホエルコゲットだぜ!」な話になってました。
本当はバッジ云々な会話をいれよーと思ってたのですが、海の上でバッジ出そうもんなら錆びるんじゃね?、と何となく思ったのでなしにしました。

その間を埋めようとしたらこーなったと。さあ次はムロタウンだ。

ナオの「バカみたい」が出せて嬉しいです♪

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