
RSE物語 story5―トウカの森―
トウカの森でユウキはキノココを追うケイタとおじさんに出会う。
キノココを見たいというそのおじさんの正体は
デボン・コーポレーションのツワブキ社長だった。
RSE物語―トウカの森―
トウカシティを抜けたユウキは、その先のトウカの森へと踏み込んだ。
「トウカの先だから、ここがトウカの森か。森っていうと、やっぱり虫ポケモンなんかがいるのかな」
ミズゴロウのゴロウとジグザグマのクマキチと供にポケモンを探しながら歩き進んでいく。
しばらくそうして奥へ奥へと歩いていくと、突然横からポケモンが飛び出してきた。
まるっこく、あせた黄色のような色をしたポケモンだ。
そのポケモンはそのまま通り過ぎて横の木の茂みに消えてしまう。
その後を追うように飛び出してきたのは蛾のようなポケモン。
そのポケモンも同じように茂みに消えていく。
「な、なんだ!?」
ユウキが戸惑ってポケモンが消えたところを見ていると、図鑑が認識音をたてた。
「ええ、と……。“キノココ”――は先に来た方か。後から来たのは……“ドく」
ドカッッ――!!!
ドサッ……――
『〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!』
横から飛び出してきた何かと思い切りぶつかって倒れ込む。しかも完全に不意打ちで地面に倒れたさい、頭をぶつけている。
涙目で若干呻いていると、ぶつかってきた方が先に身を起こした。
「わ、悪い! まさか人がいるとは思わなくて」
そう言って手を差し出してくる。
「あ、いや。ボクの方こそ余所見してたから」
ぶつけた所をさすりながら、差し出された手を借りて起き上がる。それから投げ出された図鑑を拾い上げた。
「ええと……」
「あ、オレはむしとり少年のケイタ! 本当に悪かった。ごめんよ」
「たいした怪我もしてないしいいよ。ボクはユウキ。急いでたみたいだけど」
「あっ、そうだ!」
ユウキの言葉でぶつかる前のことを思い出したのか、むしとり少年のケイタは身ぶり手振りをしながら口を開いた。
「なあ、ここをキノココとドクケイルが通らなかったか!?」
「それならさっきここを、そっちの方に」
ユウキはそう言ってポケモンが消えていった方を指差した。
「サンキュ、ユウキ! だってよ、おじさん!」
「おじさん?」
ケイタが自分がやって来た方に向かって声をかける。木々の間からスーツ姿の男の人が出てきた。
「いやはや。子供は走るのが早いな」
「キノココ見たいんだろ? ポケモンは待ってくれないんだぞ!」
ケイタは普通にその人に接しているが、どうもどこかで見たことがある。
ユウキは首を傾げて記憶を辿った。
どこだろう。確かに見た覚えがあるのだが。
そう、どこかといえば……、
「テレビ……?」
……。
「デボン・コーポレーションのツワブキ社長!?」
ユウキが声を上げると二人が驚いた顔で振り向いた。
「は!? で、デボンって、ポケナビ作ってるあの?! まさかこの人そこの社長さん!?!?」
「き、君たち! あまり大きい声で」
『ご、ごめんなさい』
ユウキとケイタは思わず手で口を押さえて謝った。
ケイタがこっそりユウキに話しかける。
「あわわ。今まで知らずにタメで話してたよ。社長っていうとエンライ人なんだろ? こういう時ってどうすりゃいいんだ?」
「とりあえず謝るとか?」
「よ、よし。――しゃ、社長さん! タメすみませんでした!」
思いっきり頭を下げると、ツワブキ社長は逆に困ったような顔になる。
「あ、いやいいんだよ。敬語を使わなくて。その方が私も気が楽だし」
「というか、ケイタは気づかなかったの?」
「テレビなんてそんな見てなかったからさ、気づかないよ。キノココ探しで声をかけられた時も、ポケモン好きのおじさんだと思ったんだ」
「キノココ? ……そういえば社長はどうしてこの森に?」
社長というと、あまりこのような所には来ないようなイメージがある。
ふとした疑問に、ツワブキ社長は苦笑気味に答えた。
「こう見えても外を出歩くのは好きなんだ。この間ある人からこの森にキノココというポケモンがいると聞いてね、見てみたくて足を運んでみたんだよ」
「それをオレが手伝ってたわけ! この森はオレの庭だからな! って、ドッキーのやつどこまで行ったんだ?」
「ドッキー? ……てドクケイル?」
「そっ! ドクケイルのドッキーだ! ケムッソの頃から頑張って育てたんだぜ! オレの自慢の相棒さ!」
「信頼してるんだね、ドッキーのこと。あ、そうだ。こっちがミズゴロウのゴロウ。こっちはジグザグマのクマキチだよ」
「ユウキの手持ちかわいいな!」
「頼れる友達だよ。あのさ、ボクもキノココ探し手伝ってもいいかな」
「社長に媚売っとくのか?」
「どこからそんな言葉が出てくるの?」
若干呆れながら、ユウキは図鑑を見える高さまで持ち上げた。
「この図鑑にキノココとドクケイルのデータを書き留めたいんだよ」
「なんだそれ?」
「ポケモン図鑑。ポケモンの生態を記録する機械だよ。ボクは父さんの研究の手伝いでどんなポケモンがどの辺りにいるのか、ていう調査をしてるんだ」
「それでその父ちゃんの研究のためにデータが必要ってことだな! お安いご用だぜ! な、ツワブキ社長!」
「ああ、もちろん」
ツワブキ社長はニコリと微笑んだ。
「お! ドッキー!」
ポケモン二匹が消えた方に三人が進んでいくと、ドクケイルの姿が木々の間に垣間見えた。
「ユウキのミズゴロウすごいな! 本当にいたよ!」
「ゴロウの頭のヒレはレーダーだから、このくらいの距離なら」
ね、とユウキはゴロウに笑顔を向けた。
「それでどうだ? ドッキー。キノココは」
ケイタがドッキーの方に顔を戻すと、ドッキーが羽ばたきながら前方を示した。
その先に、茂みに隠れるようにしてドッキーを見るキノココの姿が。
「ほら、あれがキノココだよ、社長! 茂みから出した方が見やすいかな? ドッキー!」
ケイタの掛け声に応えて、ドッキーはキノココを茂みから追い出そうとする。
瞬間――
ボフンッ――!
キノココの頭から何かの粉が吹き上がった!
「わわ! 二人とも下がって!」
ケイタが慌ててユウキとツワブキ社長を後ろに押しやる。
「け、ケイタ!?」
「あれは毒なんだよ! オレたちがすったりしたら大変だ!」
「毒!?」
ユウキは図鑑を開く。
「あった。『草木もしおれてしまうほどのもうどく』!?」
「ドッキー! ほうしをふきとばせ!!」
ドッキーの羽が羽ばたき、強い風がキノココに向かって吹き荒れる。
キノココの向こうの木々や草がどんどんしおれていく。
「オレのドッキーはどくタイプ! キノココの毒だって効かないぜ! よーし、ド」
ぐいっ。
「待ったケイタ」
ケイタの肩をつかんでユウキは待ったをかける。
「なんだよ、ユウキ」
「キノココに攻撃しない方がいい。キノココは身に『きけんを感じるとほうしをばらまく』んだ」
「じゃあどうしろって。野生だと近づいたら逃げちまうぞ」
「ボクが行ってみる。ゴロウとクマキチをちょっと持ってて」
「ておい!? 手持ちなしでか?!」
ユウキはボールに戻したゴロウとクマキチをケイタに渡すと、キノココに近づいていく。
キノココの少し前で膝を折った。
「おいで。なにもしないよ」
キノココは来ない。
ユウキは、ふう、と息を吐き、カバンからオレンの実を取り出した。
「オレンの実は好き? 食べる?」
そうしてそっと自分より手前に実を置いて、ユウキは少し後ろに下がった。
最初はしぶっていたキノココも、警戒をしながらも次第に少しずつ近づいてくる。
ぱくっ。
キノココがオレンの実を食べた。それからユウキを見る。
ユウキが動かないと見ると、ぱくりぱくりとオレンの実の残りを食べ始める。
食べるのに夢中になってるところに、ユウキはもう一個オレンの実を取り出した。
一つ目の実を食べ終わったキノココは、ユウキの手の中の木の実を見つけると、今度は警戒しないで近づいてきた。
そうしてぱくり、とユウキの手の中のオレンの実にかぶりつき、そのまま夢中にで食べてしまった。
食べ終わった後にそっと手を伸ばしてキノココをなでてやると、気持ち良さそうな仕草をする。
しばらくそうしていると、キノココの方からユウキにすりよってきた。
「よしよし。おいしかった?」
キノココに優しく声をかけながら、ツワブキ社長とケイタの方に目配せをする。
二人はそれを受け取って静かにユウキに近づいていった。
「お見事。すごいな、ユウキ」
ユウキのポケモンたちを返しながらケイタは感心したようにキノココを見つめている。
「フィールドワークの手伝いをしてると、こういうこともよくあるんだ」
ユウキがキノココを撫でながら小声で答えを返すと、ケイタが、ふーん、と納得したような声を漏らした。
「ツワブキ社長。どうですか? 間近で見るキノココは」
「とても愛らしいよ。うん。来てよかった……!」
小声で感激の声を漏らす。キノココを見れたことがよほど嬉しいようだ。
しばらくそうしてキノココを眺めていたが、突然二人に向き直り、お礼の言葉を口にした。
「二人とも、私のわがままに付き合ってくれてありがとう」
「わがままだなんてそんな」
「そーそー。ポケモン好きはみんな友達! 友達に協力するのは当然さ。な!」
顔を向けて同意を求めるケイタに、ユウキはうん、と頷いた。
「見たかったキノココも見れたし、私はそろそろ会社に戻るよ」
「じゃあ出口まで送ってくよ、社長」
ケイタが手を挙げ、ツワブキ社長の前に移動する。
「それじゃまたな! ユウキ!!」
「ユウキくん。カナズミに来たら是非とも会社によっていってくれ」
「はい。二人とも気をつけて」
そうしてユウキは二人と別れた。
しかし数分後、すぐに二人と再会することになる。
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所変わって森の中の別の場所。
「ふあ〜あ……。社長さんたらどこで油売ってるのかしら。ねぇ、もう待つのあきちゃったわ」
木の枝の上に座り、器用に伸びをする女性が一人。下で木に寄りかかっている男性に話しかけている。
どちらも似たような服に身を包んでいる。
そこに一匹のポケモンが木の上から現れた。一直線に女性の方によっていく。
「あら、やっと来てくれたみたい」
ポケモン、アメタマを肩に乗せ、女性は男性を見下ろした。
「わかりました」
頷いた男性は小型無線機を取り出した。
「もしもし、聞こえるか?」
ザザッ、と返事が返ってくる。
「OK。そっちの準備は? ――了解。ターゲットが動いた。今からコンタクトを開始する」
女性が地面に降り立ち、面白そうに顔を歪めた。
「それでは、今から作戦を開始します――」
〜*〜*〜あとがき〜*〜*〜
こっからバトルになったらいい加減長くなりそうです。すみません、切らせていただきました。
ということで、次はvs○○○団です。
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