RSE物語 story8―カナズミシティ―

起動装置を取り返せなかったユウキはツワブキ社長に謝罪するが、
新たにお使いを頼まれる。
一方、ユウキを追ってカナズミシティに着いたナオは、
カナズミジムのジム戦予約をしていた。

RSE物語―カナズミシティ―

 ユウキが丘を降りて老人の所に戻ってくると、老人がピーコちゃんの姿を見つけて駆け寄ってきた。
「ピーコちゃん!」
 ユウキが離すと、ピーコちゃんは老人の方に嬉しそうに羽ばたいていく。
 感動の、かどうかは知らないが、ともかく再会した一人と一匹は、お互い無事であることを喜ぶよう抱きあった。
 ユウキはその光景に両の頬を弛める。
 しかしすぐに、再会が済んだのか老人がピーコちゃんを肩に乗せ、ユウキの方に近づいてきた。
「君、ピーコちゃんを助けてくれてありがとう」
 ユウキの前で深々と頭を下げた。ユウキは慌てた。
「あ、頭を上げてください! えと……」
「ああ。ワシの名前はハギじゃよみんなからはハギ老人と呼ばれとる」
「ボクはユウキです。ハギ老人、ボクはなにもしてません。ですから、ボクに頭を下げないでください……」
 ユウキがほんの少ししょんぼりして答えると、ハギ老人は不思議そうに首をかしげた。
「何を言っとるんじゃ? ピーコちゃんが奪われたとき、取り戻そうと追ってくれたじゃないかい。それで十分じゃよ」
 ユウキよりやや高い背丈のハギ老人ははにかんだ。
「ハギ老人……」
「時に少年。おっと、ユウキくんじゃったな。見たところ旅人のようじゃが」
「あ、はい。父の研究の手伝いでポケモンのデータを集める旅をしてますけど」
「ほぅ。お父さんは研究者か。それなら海を渡る必要もでてくるの。海の向こうには渡れるのかい?」
 ハギ老人がなぜそんなことを聞いてくるのかわからないが、ユウキは「いいえ」と首を横に振った。
 するとハギ老人は何か納得したようにうんうん、と一人頷き、
「ならいつでも104番道路にあるワシの小屋に来なさい。ピーコちゃんを助けてもらったお礼じゃ! いつでもワシの船に乗せてあげよう」
 満面の笑みでユウキにそう告げた。言われた言葉にユウキは目をぱちくりさせる。
「ふ、船!?」
 この今目の前にいる老人が、船を持っているなど誰が思うだろう。失礼だが。
 その心情を察したのか、ハギ老人はウインクしながらこう付け足した。
「こう見えても昔は漁師だったんじゃよ。持っとるのは漁船じゃ」
「漁師……! でもいいんですか?」
「言ったじゃろ。君はピーコちゃんの恩人じゃ。君のためならいつでも喜んで船を出させてもらうよ。のぉ、ピーコちゃん」
 ピーコちゃんは嬉しそうに頷いた。
「ハギ老人。……ありがとうございます」
 ユウキは頭を下げた。
「いやいや、気にせんでくれ。それじゃあワシらはこれで帰るとするよ」
「104番道路でしたよね。ボクもカナズミに用があるんで途中まで送っていきますよ」
「ほっほ。そりゃありがたい」
 ユウキの申し出を、ハギ老人は嬉しそうに受け入れた。ハギ老人曰く、人やポケモンは多い方が楽しいのだそうだ。

 カナズミシティでハギ老人と別れたユウキは、デボン・コーポレーションに戻ってきた。
 建物の中に入ると、社内は騒然としていた。当たり前だ。会社にとってとても大事なモノが盗まれたのだから。
「おお、ユウキくん!」
 受付近くにいたツワブキ社長がユウキの姿に気付き、駆け寄ってきた。
「社長、殴られたところは大丈夫ですか?」
「ああ、大したことはない。それよりも――」
 ツワブキ社長はそれより先は言わなかったが、言わずともユウキにはわかった。彼は自然と顔を俯けた。
「……ごめん、なさい」
 意気消沈し、絞りだして掠れた声にツワブキ社長はユウキの心情を察して肩を叩いた。
「気にしないでくれ。私にもっと見抜く力があればよかったんだ」
「ですけど!」
「先程保管場所の前で気絶して倒れている社員が発見された。なんとなくだが奴らがとった一連の行動はわかっている」
 だから、とツワブキ社長は続けた。
「君だけの責任ではない。いや、君の責任なんかではない。全て私の責任だ」
「社長……」
 ツワブキ社長はユウキに向かってすまなかったと頭を下げてくる。
 ユウキは慌ててツワブキ社長の頭を上げさせる。
 わかっている。責任はツワブキ社長だけにあるわけではないことを。自分だって同じだということを。
「役に立たなくて、すみませんでした」
 ユウキは深々と頭を下げた。
「気にしないでくれ。盗まれてしまったものは、もう仕方がない。また一から作り直すつもりだよ。――ユウキくん。君は旅をしてると言っていたよね」
「はい」
「これから行く先は決まってるのかい?」
 ユウキは首を振った。トウカの森からカナズミシティまでは、何も調査せずに来てしまっている。そこの分布調査を終えてから、と考えていた。
 正直にそのままを言うと、ツワブキ社長はそれでは、と話を切り出した。
「ムロタウンとカイナシティに行ってくれないだろうか」
「ムロとカイナに、ですか?」
「今、ムロに滞在しているダイゴという人と、カイナにある造船所に私が今から書く手紙を渡して欲しいんだ。頼んでもいいだろうか?」
 ツワブキ社長の頼みに、ユウキは首を縦に振った。
「はい。それで、ボクがお役に立つなら」
「ありがとう」
 話が一段落して、ふと外を見ると、もう日が山向こうに消えてしまっていた。
「こんな時間じゃはもうどこも部屋は空いてないだろう。今日は私の家に泊まっていきなさい」
 ツワブキ社長の申し出に、悪いとは思ったものの、確かにこの時刻ではポケモンセンターも空いていそうにない。ユウキはその申し出を受けることにした。

「それでは明日の朝十時にお待ちしております」
「朝十時? 他に挑戦者は?」
「他の挑戦者の方々は、午後の挑戦予約となっています」
「あ、そう。それじゃ、また明日来ます」
 カナズミジムの挑戦予約を済ませたナオは、その町のポケモンセンターに向かった。
 完全に日は暮れ、街は夜の風体となっている。
 全く今日はとんでもない日だった。苦手な他人の手伝いをやらされるし、半日もかけずに森を抜けるし、結局目当てのバッジはもらえないし。
「こういう日は最後まで続くのよね……」
 そしてそれは見事に当たった。
「ごめんなさい。当センターの宿所はもう満室で」
 カナズミポケモンセンターのジョーイさんの言葉に、ナオは小さくため息をついた。
 チラリとロビーのソファーに目を向けると、そっちの方はまだまだ余裕がある。
「じゃあソファーで寝ます」
「本当にごめんなさい」
 部屋がないのなら仕方がない。床で寝ないだけまだましだ。
 ソファーに行きかけて、ナオはあっ、と足を止めた。
「ジョーイさん」
「はい?」
 ナオの声にジョーイさんも足を止めた。
「明日、九時まで私が起きなかったら起こしてくれませんか?」
「あら、ジム戦予約者? いいわよ。そういうトレーナーは結構多いの」
「それから、ユウキっていう、ミズゴロウを連れた少年がこのセンターに来ていません?」
 ジョーイさんは少し首を捻って、横に振った。
「探し人?」
「いえ、大したことじゃないので。おやすみなさい」
 ナオはそれだけ告げると、ジョーイさんに背を向けた。
(これじゃプーの気がすまないじゃない。どこほっつき歩いてんだか、あの甘ちゃん)
 やや不機嫌なまま床についたナオだが、その次の日、あっさりと再会してしまうのである。

 次の日の朝、八時前に目が覚めたナオは、さっさとポケモンセンターを後にした。
 時間には早いが確認したいことがあったので、一度ジムに赴いた。そのジムの前で。
「あれ、君は確か」
 聞いたことのある声がして、振り返ると、昨日散々探しもとめた人物がそこにいた。
 頭に乗っているプーが喜んでいるのが伝わってくる。
「やっぱり、ナオちゃん」
「ユウキ……」
 しかし“ちゃん”って――。
 露骨に嫌な顔をすると、ユウキは首をかしげた。
「あれ? 名前あってるよね?」
「ちゃん付けなんて気持ち悪いからやめて」
「え、でも」
「こっちは純粋に気持ち悪がってるの。呼び捨てでいいから“ちゃん”付けはやめて」
「あ、はい」
 ナオが睨みつけるように言うと、ユウキは小声で了承した。
「それで」
 ナオは鬱憤のこもった声で話を切り出した。
「あんた昨日どこで何してたの?」
「え――?」
 まさかナオから何か聞かれるとは思っていなかったのだろう。ユウキは驚いた表情のまま固まった。
 げしっ――
「うわつっ!」
 ナオが近づいて思いっきり足を踏みつけると、ユウキは痛みで我を思い出したようだ。痛そうに踏まれた足をひらひらと振ったりしている。
「――で? わたしは昨日散々あんたを探したのよ? 聞く権利はあるはずよ」
「昨日、ボクを探したの?」
「プーのワガママで仕方なく」
 プーがぺしんっ! とナオの頭をはたくが、ナオはどこ吹く風である。
「昨日はトウカの森を抜けて、106番道路の方まで行ってたよ。夜はデボンの社長さんの家に泊まらせてもらったんだ」
「だから、ポケセンでも会わなかったのか」
 ナオは一人納得すると、頭の上に視線を移した。目が“満足か”と問いかけている。
 プーが頷くと、ナオは一つため息をついた。
「ありがと。じゃ、わたしこれから用事あるから」
 ユウキが目をしばたたかせ、ナオの上を見る。プーよりも上、カナズミジムの看板を。
「用事って、もしかしてジム戦?」
「だったらなに? たく、時間ないのになんで今ノコノコとわたしの前に現れるのよ。現れるんだったらジム戦が終わった後にして欲しいわ」
「そ、そんなこと言われても……。と、とにかく頑張ってね!」
「アンタに言われるまでもないわ」
 ユウキはうぐっ、と言葉につまるが、すぐに気を取り直し手を振ってその場を離れていった。
 ナオはジムに目を戻すと、その横に立っている立て看板に視線を移した。
『いわにトキメク優等生』
 看板にはそう書かれていた。
 昨日は暗くて看板の文字がよく見えなかったのだ。だから、こうしてもう一度見にきた。
 ジムの前に立ててある看板もジム攻略のヒントになるのだ。
「いわタイプの使い手……」
 アゴに手を添え呟くと、ナオはその場を離れ始めた。
 いわタイプの弱点は、みず、くさ、はがね。逆に相性が悪いのはほのお、ひこう、ノーマル。
 草っぱらまで来ると、ナオはその場に座り込み、腰のモンスターボールを手前に並べた。
「プーは戦力から外して、キャモメは戦力外。となるとキモリとラルトス……か」
 ナオはしばらくそこで考え込むと、よしっ、と一息立ち上がり、全員をボールの中から外に出した。

 午前十時数分前。
 カナズミジムの扉の前に、ナオの姿があった。


〜*〜*〜あとがき〜*〜*〜

ププリンのプーには弱いナオ
ちなみに彼女はツンデレじゃありませんよ。ツンデレにならないように頑張ります。

次はジム戦になります。思ったんですけど、最初のジムはいわタイプっていうセオリーでもあるんですか?
ジョウト以外全部一つ目のジムっていわタイプですよね?

ユウキくんは強くはなりたいけどジムには挑戦しません。「ジムに挑戦するに自分はまだまだだし、父さんの手伝いをやらないと」と考えてるからです。
先は長いぞ、ユウキ!(ちなみにうちの“ユウキ”の発音は後ろ上がりです)

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