二、やりましょう! 初めての依頼 - 2

MIND STRONG ADVENTURES ! アルカスの少女

二、やりましょう! 初めての依頼クエスト - 3

小川が並行に流れ、見通しの良い野原を抜ける道は次第に狭まり、鬱蒼と影を落とす小径へと変わっていく。おまけに霧も出てきているときた。

確かにこれは、狙ってくれと言わんばかりの立地である。

「さあて、オバケはどこに出るのかしら」

頭後ろに腕を回しながら、あたしは余裕の表情で、いまかいまか、と歩いていく。その後ろを、レオンが警戒しながらついてきていた。

「お前も少しは気を引き締めろよな」

とやや呆れ声。あたしは小声でそれに応える。

「何言ってんの。オバケなんて本当にいたら会ってみたいじゃない。旅に出て初めての謎の生き物よ……むしろワクワクするってもんじゃない!」

「そうは言うけどなぁ」

レオンはなおもボヤいている。

が、まあ……とあたしはちらりと周囲に目を配る。

レオンも恐らくこれに気づいているから警戒しているのだろう。鳥の声も虫の声も、何一つしていない。森が静かすぎるのだ。おまけに、森に入ったあたりから出ている霧は、徐々に濃くなっている。

その時、あたしの耳が音を捉えた。レオンにも聞こえたのか、ほんの少しばかり表情が険しくなっている。

ォォ……ォオォ……

何かのうめき声のようなものが、森のどこかからか響いてくる。更に周囲の気温が下がり始め、森の中でゆらりと何かが揺らめいた。光というか火というか……遠目だとなんかそんなもんが不気味に声に呼応して、揺らめいてるといったところだろうか。

サレ……タチサレ……

ダメ押しに大きな影が霧の中に、ぼぉ―と浮かび上がる。

うーん……。

あたしはその影を見てなんとなく仕掛けがわかってしまい、なんとも言えない気分になる。

「レオン、ちょっと構えててね」

小声でそう注意しておいて、あたしは呪文を唱え始める。

統べるもの・風精ウィード・オニメルボス

風将軍となりて猛威と驅けアコキ・ツオエム・イタロナット・ヌゴエィサゼク

力を示せエシモス・オゥ・アリケット

オバケ(?)の台詞を遮るように、あたしは真上に伸ばした手を、地面に向かって振り下ろす。

暴風威グナウ・トゥサーブ!」

あたしを中心に突風が巻き起こる!

それは周囲の霧を押し退け、払い、オバケの正体を露わにする!

影よりもずっと小さい、影っぽい形をした板と、その後ろに輝く魔術の光。なんか安っぽいなぁ、と思ったけどやっぱり……。

お化け役だろうか? まあそうだと仮定して、貧相というよりは粗野な格好をしたむさい男が二人「何が起きたかわからない」と書いてある顔で、こちらを見ていた。

氷の矢ウォー・オゾルフ!」

続けて唱えた魔術を解き放つ。無数の氷の矢が空中に出現すると、それは目の前の男たち二人ではなく、左手奥に降り注いでいく。小さな悲鳴と凍りつく音。同時に、一時的に飛ばされて戻り始めていた霧が急激に引き始める。

「ビンゴぉ!」

最初に術を放った直後に、もう一人動揺する気配があったので、試しに撃ってみたのだが、やはり魔術で霧を生み出している奴がいたのだ。

「て、てめえらよくも!」

おお、よく村の大人たちの武勇伝で聞く『三流台詞』とやらを生で聞くとは。

目の前の男二人の右側にいる奴が叫ぶと、それが合図だったのか、左右の森から武器を構えた数人の男たちが姿を現した。そのどれも、もれなく清潔感皆無な髭面のおっさんである。

あ、もしかしてこれが、世に言う『盗賊』って種類の人たちだろうか。

「人を近づけんなって話だったが、こうなっちまったら仕方ねえ! 盗るもん盗ってやっちまえ!」

あれ? 盗ることが目的じゃないの、こいつら?

男の号令一つで、雄叫びとともに盗賊たちがむさ苦しい波を作って飛びかかってくる。

あの右側の男が、この中で一番エライのか、などと考えつつ剣を抜こうとしていると、レオンがあたしの前に出る。

「お嬢ちゃんは下がってな」

「いや、あたしも」

あたしが何かを言い返す前に、レオンは剣を抜き放ち様、既に三人を切り捨てていた。

手にしている剣は長さ的にロングソードだろうか。そのまま流れて、近くに来ていた盗賊二人をさらに切り捨てた。

瞬く間に五人も倒されてしまった盗賊たちは、動揺してその場で動きを止める。

「次にこうなりたいのは誰だ? いくらでもオレが相手してやるぞ。さあ!」

動揺を察したレオンは、切っ先をぐるりと盗賊に向けて威嚇する。

するとどうだろう。盗賊たちの視線がこちらに集中しているのがわかる。男がダメなら女なら、ということかな。

「言っておくが、この子に矛先を向けても、もれなくオレが相手をするぞ」

と、なぜかそこでレオンに目配せされる。

んーと……。

一、レオンは、あたしに剣を抜かせなかった。

二、レオンは、わざわざ盗賊を脅してビビらせた。

三、その上で、あたしに何かして欲しいと合図している。

……この場合、あたしがすべきは、レオンの応援か?

そこに考え至ったあたしは、適当に彼に乗っておくことにする。

「レオンやっちゃえー。ドラゴンだって彼には敵わないんだからー」

ちょっとわざとらしかったかな……?

しかし、そんな心配を他所に、どよめきが大きくなった。

「け、剣でドラゴンに……⁉」「こいつただもんじゃねえぞっ⁉」「こんなやべーやつ相手にしてられるか!」

などなど、完全に腰が引き始めた悲壮な声が聞こえてくる。

弱腰になった奴に言う言葉は一つ、『キッカケ』になる言葉である。レオンは最初からこうするつもりだったのだろう。迷わずその一言を口にした。

「さあ、どうする!」

蜘蛛の子が散るように、盗賊たちが森の中へと逃げて出していく。

「あっ、お前らっ! クソッ、てめえら覚えてろ!」

逃げていく子分に愕然としながら、あたしたちにツバを吐くと、命令していた男も身を翻して何処かに向かって走り去っていく。一緒にいた男も、半拍遅れて後を追うように逃げていく。

あたしがぼけーっとそれを眺めていると、隣でレオンが背中を叩いた。

「なにしてるんだ、追いかけるぞ」

言うが早いか、彼はあたしの隣から飛び出していく。

「あ、ちょっと!」

慌ててあたしは彼の後ろ姿を追いかける。彼が追いかけているのは、最後に逃げ出した男二人の後だ。

「なんであいつらを追いかけるの?」

「着いてきゃわかるよ。しかし、剣士って言うからそう思ってたら、まさか魔術師とは。そういえば最初になんか魔術使ってたなぁ……」

あたしが追いついて並走すると、レオンが眉を八の字にして感心していた。

「あのくらいそんな難しい魔術でもないし、誰でも使えるでしょ?」

「悪いが、オレは魔術はからっきしなんだ」

そーなのか。つーか魔術使えない人間っているんだ。

村じゃ皆使えてたけど狭い世間だし、そういう人も目の前に居るのなら、きっと世の中にはいっぱいいるんだろう……たぶん。

「隠れろっ」

森の中をレオンに付き合いながら走っていると、突然その辺の木の陰に押し込まれた。

「なにすんの」

「しっ」

レオンに口を塞がれ、顎で向こうを見ろと言われる。言われるまま木の陰からそっと覗くと、洞窟の入口が見え、追いかけていた男二人がキョロキョロと周囲を警戒しながら、中へと消えていった。

「……もしかして盗賊のアジトってやつ?」

男たちの姿が完全に見えなくなったのを見計らって、あたしは小声で確認する。

「そういうことだ。ああいう奴らは一人じゃなんもできないから、大本を叩いといた方がいい」

「ってことは、今からあそこに殴り込み?」

「そういうことだ」

なるほど。こういう運びにしたかったから、先程はあたしに剣を抜くなと言ったのか。

そういうことなら、と、あたしも今度は堂々と鞘から剣を引き抜いた。

「今度はお嬢ちゃんにも戦ってもらうことになるが……」

「問題ないわ。初戦闘に胸躍るってやつよ」

「なんだか心配になる言葉だなぁ……。―っとそうだ。中で爆発系の魔術とか派手なのとかは、絶対使うなよ。崩れるから」

「わ、わかってるわよ」

―忘れない保証はないけど。

気を取り直してあたしとレオンは入り口脇に移動して、中を確認する。転々と篝火が一定間隔焚かれているので、光源は大丈夫そうである。槍を手に警戒態勢でうろつく盗賊たちの姿も見えた。

どうやら盗賊は、さっき逃げていったやつらだけではなかったらしい。

レオンが目で「オレが先に行く」と言うので、ありがたく先方を譲る。やってくれるというのなら、それに越したことはない。

タイミングを見計らってレオンが踏み入った。その後に続いて、あたしも踏み込んでいく。

さっそく手近な盗賊を切り伏せる彼の動きは、何一つ無駄がなく、先程も思ったが感嘆するほどに美しい。何度も見ずともすぐにわかるほど、彼の剣の腕は紛うこと無く一流だ。

世の中にはこんなに剣を使いこなせる人がいるとは、あたしもまだまだである。

奥に入っていくと、左右に伸びる分かれ道に出た。考えがあるのかどうかはわからないが、レオンがとりあえず進んでいる方向に、あたしも黙ってついていく。

こういう時の彼は迷わな―いや、あたしが覚えとかないと、帰り出れないとかすごくありそうで怖い。

そんなことを考えていると、背後から足音が聞こえてあたしは振り返る。賊が一、二……五名、お出ましである。あたしの背中、進行方向ではレオンが剣を振るっている。どうやら囲まれた状況のようである。

あたしと対峙する一人が、にへらとしながらあたしに剣を振りかざし、迫る!

……おや?

あたしは難なくそれを躱して相手の懐に一足飛びに潜り込み、剣で薙ぎ払った。

ぎゃっ! と悲鳴を上げて盗賊が地を転がる。あたしを女子どもと侮っていたのだろう。残り四名が一瞬にして顔色を変えたのがわかった。

―。いやいやあたし子供じゃないから! もう大人だから‼ 女はあってるけど!

そして今度は二名同時―が、動きがバラバラ!

あたしは動きの早い方の剣を絡めて地面に叩きつけると、返す刃で片付ける。さらにその反動を利用してもう片方の剣を受け止めた。

と、そこに槍が割り込んでくる!

相手の剣を弾いて軽いステップで後ろに下がるが、着地してすぐに地を蹴ると、引き戻される前に槍を真っ二つに叩き折る。右から剣が迫るのが見えたので、柄を刃に叩きつけて弾くと、あたしは二名を同時に切り伏せた。

ラスト一人!

あたしは躊躇なく相手の懐に踏み込むと、相手の剣を捌いて、難なく最後の一人を沈黙させた。

ふぅ……、とあたしは一息つく。

こいつら、動き遅いし行動が丸わかりだし、村のおっちゃんたちより弱いんだけど……。

今まであたしの中では、村のおっちゃんたちが普通の強さだと思っていたのだが、もしかして村のおっちゃんたちが異様に強いだけだったりするんだろうか? てーなると、あたしの実力って世間から見たらどの辺になるんだろう……。 

あたしの常識が上方修正されつつあるのを感じながらも、壁に目印をつけてレオンと合流する。レオンの方は、既に自分の分を片付けたあとで、あたしの動きを気にしてか、戦いぶりを観戦していたようだった。

その証拠に、彼の隣に立つとすぐに声をかけてくる。

「大丈夫だったか?」

「このくらい、剣だけでよゆーよゆー」

「斬ったことはある、とは言ってたけど……」

ああ、彼はそこを気にしているのか。

あたしは彼の心配を察して、いつか聞いた、剣を教えてくれた例のおっちゃんの言葉を思い出して彼に伝えた。

「急所さえ外せば、生きるか死ぬかは、後はそいつの運次第。相手を気にして自分が死ぬ方が馬鹿らしいから、気にせず自分が生き残ることだけ考えろ―って教わったから、急所は外したわよ」

「あ、そう……。―こうやって子供は洗脳されてくのか……」

レオンは聞こえないように呟いたつもりなのだろうか。その割には、あたしの耳は、はっきりとその言葉を捉えていたけど。

この教えは個人的に納得している方なのだが、なんかマズイのだろうか?

首を傾げている横で、レオンが「先に進むか」と前進を促したので、特に拒む理由もなし、あたしはそれに従った。

その後もバッタバッタと盗賊を倒しつつ進んでいくと、篝火のない、突き当りの部屋に出た。

「なにここ。牢屋?」

部屋に一番近い通路の灯りでは、少し距離があって全貌がよく見えない。が、少なくとも鉄格子っぽいのが、篝火を反射しているのだけはわかった。

光火アッタラプノル

あたしは部屋を明らかにするために、手のひらに光球を生み出して、空にふわりと放り投げた。

空中に浮かび上がった魔術の光球は、部屋の詳細を浮かび上がらせる。

「なっ……⁉」

「これは……」

中を確認したあたしとレオンは、絶句する。

そこは想像通り牢屋だった。あたしの足元から、手作り感満載の鉄格子の向こう、奥にまで広がる岩肌。地面はならされた形跡もなくデコボコとしており、壁と鉄格子の間すら、そんなに開いていない。

そんな狭い空間に、水色の髪の幼い少女が膝を抱えて俯いていた。顔は垂れ下がるざんばらな髪に隠れて見えず、身に纏っている白いワンピースも泥にまみれてぼろぼろである。

「いたぞ! 侵入者はこっちだ!」

「まじぃぞ、あっちはあれが」

空気詠み人知らず。いや、むしろ八つ当たり先を寄こしてくれた、と喜ぶべきか。

あたしたちがやっつけたであろうお仲間の姿を見つけて、血眼になって探しくれたのだろう。煩わしい声と共に武器を構える音がして、あたしとレオンは眉尻を釣り上げて盗賊どもを振り返った。

「あぁんーたぁらぁ……っ!」

牢屋の前で仁王立ちするあたしたちの姿に、盗賊どもはぎょっと目を丸くしている。見れば先頭にいるのは、先程お化け騒ぎを指揮していた奴らだ。

「あ、アニキ見られちまいましたよ、あれ」

「わ、わかってらぁ! ここでやっちまえば済む話だ!」

―ほほぅ。盗賊たちがひどく慌てている。

ここにあるのは牢屋に居る少女だけだ。ということは、この子が外の人間に見られると、盗賊さん的には相当まずいということだろう。

「レオン、少しだけ盗賊まかせていい?」

「別に平気だが、お嬢ちゃんは?」

「牢屋のあの子を外に出すわ。じゃ、よろしく」

あたしが軽くレオンの背を押して送り出すと、レオンも驚いた顔をしていたが、それ以上に盗賊たちが動揺していた。

正直に言うと、レオンの腕なら鉄格子は簡単に斬れるだろうし、その方が早いと思う。

だが、今ここであたしが盗賊の相手をすると、うっかり洞窟を破壊しかねない―気がする。

つまりこれが安全な役割分担というやつなのだ。

統べるもの・地精テドラモ・オニメルボス

いにしえよりの汝が寵愛をもってオットミウ・アウオアイチ・ガズェノニ・ノレイシン

我にさらなる力を与えよエヤアトア・ワリクト・アタナリセ・ナロウ

あたしは剣を構えながら呪文を紡ぎ、魔術を構築する。そしてより合わせた魔力を解き放った。

閃光オクラフ・イア!」

柄を握る手から魔力があふれて剣を覆う。微かに刀身が光をまとった。

「ちょっと下がっててね」

あたしが中に向かって注意を促しても、中の子は身じろぎすらしない。

魔力をまとって切れ味が抜群によくなった剣で、あたしは鍵の部分を破壊した。ギィ―と軋む音がして牢屋の戸が開く。

一度魔術を解いて剣を収めると、戸を潜り抜けて向こう側に入る。

「あなた、大丈夫? 立てる?」

女の子の前に膝をつき、話しかけたが、返事はない。

「それじゃあ、ごめんね」

一応断ってから、あたしは彼女を無理やり抱き上げた。

肌に触れた時、初めて少女から「びくり」とした反応が返ってきた。が、それでも、その子はなにも言わず、なすがままにされている。

背中は動いていたので息はあるはずなのだが……それにしても……。

「レオン、おまたせ」

「こっちを手伝え……ないなそれじゃ」

少女を抱えてレオンの背中に合流する。肩越しに確認したレオンは、それだけ呟いて飛びかかってきていた盗賊を一人斬り払った。

「レオンがこの子守りながら戦えるなら、交代してほしいけど。少しスッキリしたし」

「さっき牢屋を選んだのはそれか」

レオンは小声で納得しながら、あたしの腕から少女を右腕だけで軽々と抱き上げた。

抱きかかえた瞬間、レオンも少し驚いた表情になっていた。てことは、あたしの気のせいじゃなく、やっぱりこの子相当―軽い。

手足を見る分には確かにふっくらしているとは言い難いが、ガリガリに痩せているわけでもない。軽いだろうなと思って抱き上げたらその予想の上をいって軽かったのだ。

―この子、人……だよね?

などとちょこーっとばかし気になりながらも、剣を抜いて盗賊たちに対応する。

「ところでレオン。盗賊って、人様から金品巻き上げて溜め込んでるやつらよね?」

「そうだが、それが?」

「こいつらの頭探すより宝物庫探さない?」

その場にいた盗賊を軒並み静かにさせてから、あたしはレオンに振り返った。

「なんでここで宝物庫になるんだ? オレ達の目的は」

「それは忘れてないけど、持ち出せるだけお宝持ち出して、後は洞窟に向かって魔術ぶっ放して潰せば、終わんないかなって。こんなすぐにでもお医者に見せたい子を拾ってしまったわけだし。治療費を回収しつつ依頼も完遂する、あたしの名案」

「こいつらの財宝を医療費に使うな! お前の物でもないだろ!」

すっごくいい計画だと思ったのに、なんでか怒られた。

「こういう奴らが溜め込んだお宝って、奪い取ったもん勝ちじゃないの? ねーちゃんちがそう言ってたけど」

あたしが素朴な疑問を投げかけると、レオンがもの言いたげに無言で顔を歪めて唸っている。

―財宝を回収するのは別に止めないが、普通は近隣の街の役所とか警邏隊とかに引き渡すもんだろ……盗品なんだから……」

「えー金貨くらいちょーっとくすめたってバレないって。じゃあ聞くけど、この子を医者に見せるとして、レオンはお金あるの? そこそこ掛かるって聞いたけど。あたしそんなに持ち合わせないわよ」

レオンが「うっ」と言葉に詰まった。痛いところをつけたらしい。

一般的な医療費は途方もなく高いというわけでもないと聞いているが、収入が不安定な旅人にしたらちょっと懐に打撃になる。ということで、よし! ここで畳み掛け!

「この子がここにいたってことは、この子から巻き上げられたお金もあるかもしれないし、それを回収すると思えば! 大丈夫問題ない!」

またぞろ湧いてきた盗賊を張っ倒しながら、あたしはぐっと親指を立ててみせた。

レオンは「うーん?」と首を傾げていたが「医療費だけだぞ」と、不満そうにぼそぼそとこぼしていた。

「宝物庫を探すなら、ここの頭を探すのが手っ取り早い」

ついでにそんなアドバイスまでくれた。相変わらず顔は納得していなかったが。

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